いきいき音楽科

音楽に関する様々な情報を発信している「いきいき音楽科」チャンネルのライブラリーです。

七夕様で学ぶリハーモナイズ【第四回】同じところを目指す色んなコード進行

連載|無料記事|著者:いきくん

 

こんにちは。いきくんです。

「七夕様」を題材にしてリハモを練習するシリーズの第四回です。

 

第三回はこちら↓

七夕様で学ぶリハーモナイズ【第三回】どこで「動かす」かをコントロールしよう - いきいき音楽科

 

 

続きも当てはめてみよう 

第一回で、「知っている曲のコード進行になんとかして当てはめてみる」という練習方法をご紹介しました。

 

There will never be another youのコード進行

Imaj7 | Imaj7 | VIIm7♭5 | III7(V7/VI)|

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例えば「There will never be another you」という曲のコード進行に当てはめた場合。このコード進行自体は、現代のアニメソングやアイドルソングでも多用されている定番のパターンですね。

 

それでは、「七夕様」のメロディを、引き続き同じ曲の進行に乗せていった場合どうなるでしょうか。

 

VIm7 | VIm7 | Vm7 | I7(V7/IV) || IVmaj7 | ♭VII7~

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こんな感じですね。

充分成立しています。

(実はThere will never be another youの後半16小節にそのまま「七夕様」を1コーラス乗せるとばっちり成立します。)

 

どこからどこへ行くのか

ここで第三回の内容を思い出して頂きたいのですが、

先ほどのパターンは曲の頭から数えて9小節目にサブドミナント(B♭maj7)を持ってきて、そこに目がけた「動き」(Cm7-F7-B♭maj7)を作っているわけですね。

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ここからが今回の課題「同じ(似たような)方向性の色々なコード進行を探る」です。

 

ちょっと分かりにくい表現だと思いますが、具体的には、

5~8小節目で、(例えば)Dm7から始めて9小節目のB♭maj7を目指す他のパターンをいくつか考えてみましょう、という話です。

 

例えばこれは「動き」をひとつ増やしていますが、

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ツーファイブではなく「F→F7→B♭maj7」と動いてサブドミナントを目指す、じゃあその手前にV7を置いてみよう、という結果のコード進行です。

 

もしくは、これはコード進行自体の「意味」が随分変わりますが、

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ドミナントでセクションを閉じて、次のセクションをサブドミナントから始める。J-POPのBメロ→サビなんかでもよく見られるパターンです。

 

本来トニックを目指している「動き」の行先をサブドミナントに挿げ替えてしまっているようなパターンなので「同じ方向性」と言えるか微妙ですが、「Dm7から始まってB♭maj7に辿り着く」という条件であればクリアしています。

 

和声的な代理関係や同じ意味のコードではなく、「ある地点から同じところへ向かうことが出来る様々な可能性」を考えていこう、というのがリハモで大事なひとつの視点となります。

 

向かう先を変えてみよう

では次に、同じくVIm7から始まって、向かう先をIIIm7と設定して考えてみましょう。

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そもそもIIIm7はImaj7と互換可能なコードですから、先ほどの「Gm7-C7」からそのまま行先を「Am7」にするだけでも成立しますね。

 

他の可能性も考えてみましょう。

僕が好きなコード進行のひとつに、VImからベースを順々に下げていく、というパターンがあります。

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(実際に何を鳴らすかによってコード表記は何通りか考えられます)

 

こうして「Bm7♭5」に辿り着いたあと、これをセカンダリードミナントに対するIIm7♭5と見立てて、

そこから半音下のドミナントセブンス(=いわゆる裏コード)に進むと「Bm7♭5 - B♭7 - Am7」で「Am7」を目がけたツー・ファイブ(裏)・ワンが作れます。

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一方、僕が実際に採用した進行は、同じく「Bm7♭5」からベースを半音下げて、「B♭m6」というサブドミナントマイナーに進むパターンです。

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オリジナルでドミナント(V7)が来てメロディが「ルート」や「5th」や「13th」(や一応「7th」)の場合、そのまま「IVm6/IVm7/IVmMaj7など」に置き換えても成立する、というのは覚えておくと使えると思います。

 

今回の話と、前回の「どこに動きを作るか」という話を組み合わせると、ものすごくたくさんのリハモの可能性が見えてくると思います。

 

というわけで、今回はここまでです。

 

こちらの動画もよかったら併せてチェックしてくださいね!

youtu.be

 

次回、第五回は「ドミナントセブンスあれこれ」です!

七夕様で学ぶリハーモナイズ【第三回】どこで「動かす」かをコントロールしよう

連載|無料記事|著者:いきくん

 

こんにちは。いきくんです。

「七夕様」を題材にしてリハモを練習するシリーズの第三回です。

次回から具体的なコード進行のアイデアを紹介する予定なのですが、今回はその準備として、ちょっと回りくどいですが「前提」として押さえておきたい部分をお話しします。

 

第二回はこちら↓

七夕様で学ぶリハーモナイズ【第二回】ルートとメロディの度数を把握しよう - いきいき音楽科

 

 

「動き」を増やしてみよう

「七夕様」の冒頭部分に西洋音楽のコードをつけるとすれば、一般にこのようになると思います。

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トニックが続き、最後にドミナント。

そして次でまたトニックに解決して進んでいきます。

 

リハモは、同じメロディに対して別のストーリー展開を設定しなおす行為とも言えます。

まずは最もシンプルな実例を見て頂きましょう。

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今、オリジナルのコード進行の中間地点に新しく「動き」を追加しました。

 

これがひとつの、「ストーリー展開の設定し直し」です。

(もちろん今回はあくまでリハモの練習が目的ですから、これがオリジナルと比べてよいか悪いか、ということは脇に置いています。)

 

「動き」の位置を変えてみよう

さて、ではもう少し複雑にして。

冒頭部分をこのようにコード付けした場合と、

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このようにコード付けした場合を比べてみましょう。

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どちらも縦の響き、横のコード進行の流れともに成立していますが、両者が決定的に違うのは、動→静(解決)が置かれているポイントです。

 

前者は4小節目にドミナントが来ており、後に続く5小節目のトニックに向かっています。

一方で、後者は3小節目にドミナントが来ており、4小節目をトニックで一度閉じています。

 

同じメロディであっても、このようにどこでどのように動きを持たせるか、というのをコード進行側で変えてしまうことが出来るのです。

もちろんオリジナルの「イメージ」や、メロディが持っている力・方向性もありますが、それを踏まえたうえで活かすことも、敢えて逆行させることも自由です。

 

1625に乗せてみよう

もうひとつ別の例を見てみましょう。

この冒頭のメロディに対して、ダイアトニックコードで1625というシンプルなコード進行をつけてみてください。

人によってこのようにつけた方と、

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このようにつけた方がいると思います(もちろんそれ以外もありです)。

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これらはどちらも成立しています。同じコード進行でも、2拍チェンジなのか、1小節チェンジなのか、はたまた変則的なのか、それによって当然ストーリーの展開は変わってきます。

 

V7→Iだけじゃなく

最後にもう一つ。「動→静(解決)」は、ひとつの例としてはそのキーの「ドミナント」→「トニック」と言う分かりやすいものがあります。

C7→Fmaj7

 

が、それだけでなく、「サブドミナント」→「トニック」、「サブドミナントマイナー」→「トニック」ほか、どっちつかずなものも考えていくと様々な可能性が見えてきます。

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さて、ここでいうストーリー展開の「動→静」は、決してそのキーのトニックに対するものだけではありません。

 

別の何かひとつのコードをターゲット(仮のトニックと言ってもいいです)とした、先ほど挙げたようなあらゆる動きも同時にコントロールしていく必要があります。

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これは、D7→Gm7(IIm7)という「動き」をどのタイミングに持ってくるか、という例ですね。

 

さて、くれぐれも今回の話は、いくつか挙げた例のうち、

「色々ありますが、このパターンが最も良いでしょう」

というタイプのものではありません。様々な可能性を探り、自分が求めているものをより具体的に表現できるように練習しましょう、というお話です。

 

また、実際に試してみて「うーん、これはちょっとないかな」と思ったものも、自分の中にある求めているサウンドや、オリジナルのイメージと違う、というだけで、別の曲、別のシチュエーションでは使える可能性がある、ということも忘れてはいけません。

 

細分化だけじゃなく

今回はオリジナルの(ということにした)状態が、コード進行としては非常に平たいものでしたので、基本的にはそれを細分化したり、

まったく別のコード進行にする場合も細かいコードチェンジを与えましたが、逆にオリジナルがこのようなコード進行だった場合、

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もちろんこれを大らかなものに変えるということもあり得ます。

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さて、今回はここまでです。

次回は具体的なコード進行のパターンをいくつか紹介していきます。

 

こちらの動画もよかったら併せてチェックしてくださいね!

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次回、第四回は「同じところを目指す色んなコード進行

七夕様で学ぶリハーモナイズ【第二回】ルートとメロディの度数を把握しよう

連載|無料記事|著者:いきくん

 

こんにちは。いきくんです。

七夕様を題材にしたリハモのアイデアや練習方法をご紹介するシリーズの第二回目をやっていきたいと思います。

 

第一回はこちら↓

【新連載】七夕様で学ぶリハーモナイズ【第一回】 - いきいき音楽科

 

 

前回までのあらすじ

メロディに対して自由に色を付け直していく感覚を捉えるための第一歩として、「知っている曲のコード進行に何とかして当てはめてみる」という方法を紹介しました。

 

There will never be another youのコード進行

Imaj7 | Imaj7 | VIIm7♭5 | III7(V7/VI) ||

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ルートとの関係を把握しよう

さて、当てはめてみて「うん、なんか行けそうだな。はい、終わり。」ではなく、成立したパターンは逐一分析していきましょう。

 

具体的には、各部分のコードのルート(根音)と、メロディの音程関係を確認していきます。

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(このときテンションコードとしての響きが非常に重要になってくるため、特に理由がなければノンコードトーンは経過音等も9,11,13という書き方にしています。なんて言いつつ、実際には脳内でやっているのでわざわざ書かないことの方が多いですが…笑)

 

これによって、あるタイプのコード上でこの音程関係の音を演奏したときにどういったサウンドが感じられるのか、ということを徐々に体得していくことができます。

 

ひとたび体得してしまえば、コード側、メロディ側どちらの視点からでも、目指しているサウンドとこの単音を結びつけるにはどうしたらよいのか、ということが具体的にイメージできるようになるはずです。

 

オプションを探ろう

ところで、先ほど音程関係を確認するときに、「ルートとメロディの」と言ったのを覚えているでしょうか?

 

実はこれが結構重要で、ルートとメロディの関係を保ったまま、第二、第三のコードタイプのオプションを考えていくことが出来ます。

 

例えば1小節目は「F」というルートに対して「5、1、9」という音が当てられていました。

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となると、これって縦の響きとしては「Fmaj7」だけでなく、「F7(9)」でも「Fm7」でも、「F6」「F」「Fsus4」「Fsus2」「Fm」「Fm6」「FmMaj7」でもいけるのでは、ということが分かります。

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ここではトニックの代わりとして「ブルージーなI7を使う」とか、「同主短調のIm7を使う」、ということももちろんできますし、

 

「Fm7」から着想を得て、これをツーファイブのツーと見立てて「Fm7 - B♭7 - E♭maj7(♯11)」というメロディ側のキーから外れた動きにしてやろうかな、なんていう飛躍も可能です。

 

もしくは、2小節目はそれだけでなく、「Fdim7」なんかも行けそうだな、とか。

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「Em7♭5」で「11」という3小節目は、

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「Em7」でも成立するし、「E7」はちょっと危ないかなあ、でも「E7sus4」にすればいけるかなあ、なんていう実験も可能です。

 

今すぐに使えなくても…

これはあくまで実験であって、決して最終的な完成形に採用されなくてもいいのです。

 

ひとつのアイデアを、限定的なものとして終わらせるのではなく、そこから第二、第三の可能性を見つけられる視点や、ストックしておいたアイデアが別のタイミングで生きてくることも往々にしてある、というのがポイントです。

 

というわけで、前回に引き続き、様々なコード進行上に「七夕様」のメロディを乗せてみて、ルートとメロディの音程関係を分析してみてください。

また、そこから派生させて別のコード付けの可能性も是非探ってみてください。

 

こちらの動画もよかったら併せてチェックしてくださいね!

youtu.be

 

次回、第三回は「どこで「動かす」かをコントロールしよう」です!

 

 

【新連載】七夕様で学ぶリハーモナイズ【第一回】

連載|無料記事|著者:いきくん

 

こんにちは。いきくんです。

満を持してから更に更にお待たせしましたが、今日からブログ新連載です。

題して「七夕様で学ぶリハーモナイズ」シリーズ。

ブログの更新どころか取り上げるイベントすらも時期を遅らせていくスタイルです。

 

リハモとは?

皆さんはリハーモナイズという言葉をご存じでしょうか?

よくリハモと略されたりしますが、あるメロディや音に対して……

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そこにもとから設定されているハーモニーを、別のハーモニーに置き換えて雰囲気をガラッと変えてしまおうという試みの事です。

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ちなみに…

もちろん上の例のようにオリジナルがある状態から、「コードを置き換えて」「アレンジする」という例が説明としては分かりやすいのですが、

自分が作曲をしているとき(オリジナルがまだ確定していない状態)でも、途中でリハモ的な発想を使うことはありますし、「メロディに対してコードを設定する」だけでなく、「コード進行だけで見て置き換え可能な別のコードに換える」というパターンもあります。

 

可能性は無限大

リハーモナイズを基礎から勉強しようとすると、「同じ機能のコードで代理する」というところから始まることが多いと思います。

 

例えばジャズに端を発するポピュラー音楽理論では、

【I度、III度、VI度がトニックの仲間】

とされており、トニックのコードが使われている部分では、これらのコードは相互に置き換え可能という理屈です。

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確かにこれはバッチリはまっていますし、リハモにおいて知っておくべき情報ではあります。

 

しかし今回のようにメロディがそのキーの3番目の音(Fメジャーキーで「A音」)を演奏している場合、縦の響きとしては、実はダイアトニックコードどれでも使えます。

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もちろんダイアトニックコードだけでなく、セカンダリードミナントやモーダルインターチェンジ、縦の響きだけで考えて全くもとのキーにとらわれないコードを選ぶことも可能です。

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はじめの一歩

リハモでは同じ機能の別のコードに付け替えるだけでなく、「同じメロディを真逆の機能にしてしまう」「機能性の薄い、もしくは全く感じられないコードを付け直してしまう」といったこともよくあります。

 

メロディに対して自由に色を付け直していく感覚を捉えるときに、ひとつのおすすめの方法は、「知っている曲のコード進行に何とかして当てはめてみる」です。

 

「七夕様」のメロディを有名なジャズスタンダードのコード進行に乗せてみましょう。

 

There will never be another youのコード進行

Imaj7 | Imaj7 | VIIm7♭5 | III7(V7/VI) ||

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Autumn Leavesのコード進行

IIm7 | V7 | Imaj7 | IVmaj7 ||

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All of meのコード進行

Imaj7 | Imaj7 | III7(V7/VI) | III7 | VI7(V7/II) | VI7 | IIm7 | IIm7 ||

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メロディ側、コード進行側の尺を倍にしたり半分にしたり、工夫をして様々な曲のコード進行に「七夕様」のメロディを乗せてみましょう。

 

フレーズの始まるポイント、終わるポイントに対するコード進行側のキャラクターや意味が変わってくる、それでも縦の響きは成立している、この感覚をまず掴むことが重要です。

 

是非、一部でも良いので皆さんの知っている曲や普段使うコード進行に、七夕様のメロディを乗せるという遊びを試してみてください。

 

さて、こちらの記事はシリーズ連載する予定です。

以下の動画で紹介しているリハーモナイズのアイデアや練習方法を数回に渡って紹介していきます。

youtu.be

 

【次回】第二回「ルートとメロディの度数を把握しよう

オルタードスケールの練習方法を徹底的にご説明します

単発|無料記事|著者:いきくん

お疲れ様です! いきくんです。

今回は、ジャズのアドリブ演奏を志す人が避けては通れないオルタードスケール関するお話です。

 

はじめに

オルタードスケールとは何か。

その由来や、異名同音の正しい扱いについて言及するとかなり長くなりますので、

近々また別で理論的な側面を解説する記事を書こうと思っています。

 

が、ことジャズのアドリブの実践的な側面においては、

ドミナントセブンスにフィットする「おいしい音」が詰まったスケールだと考えて下さい。

 

なんせ名前が「オルタード」とイカツイので、

初心者のうちは「ジャズにはそういう難しいスケールがあるらしい」と敬遠してしまったり、

 

逆に一度このスケールの存在を知ると、「ドミナントセブンスを見たらオルタードスケールしか演奏できなくなる呪い」にかかってしまったりします(笑)

 

スケールの構成音

Gから始まるオルタードスケールは・・・

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ちょっと理論的な話に寄り道すると、

(よくわからんって人は、今は読み飛ばしてください。)

 

これは実は、

①メロディックマイナーの第7モードと同じだったり・・・

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②通常のロクリアンの第4音を半音さげたものだったり・・・

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ということは言い換えると、

 

③メジャースケールの主音以外を全て半音下げたものだったり・・・

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と、3通りの言い方で何故か「スーパーロクリアン」という謎のスケールをご紹介しましたが、

実はこいつ、オルタードスケールと全く同じ構成音を持っており、

 

スーパーロクリアンを異名同音的に読み替えたものが「オルタードスケール」です。

(詳しくは後日。)

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さて、するとどうでしょう。

ドミナントセブンスというコードにとって重要な音である、コードトーンの「ルート、3rd、7th」を含み(5thは実は重要ではない)、

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それ以外の音は「♭9th、♯9th、♯11th(あるいは♭5th)、♭13th」という「オルタードテンション」になっているではないか!

 

という話なのです。

 

オルタードテンションとは

例えば「G7」と一緒に通常の「テンション9th(=ルートの全音上と同じ音)」を演奏すると・・・

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この9thを半音変化(オルタレーション)させた「テンション♯9th」や、通常の13thを半音変化させた「テンション♭13th」を入れて演奏すると・・・

 

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なんともスパイシーな響きですよね。

 

ここで最初に言ったことをもう一度。オルタードスケールは、

 

ことジャズのアドリブの実践的な側面においては、

ドミナントセブンスにフィットする「おいしい音」が詰まったスケール

 

要するに「便利だね」ってことです。

 

オルタードを使う心構え

さて、オルタードスケールの構成音が分かったとて、それを実際にどう使ったらよいのでしょうか。

 

Gオルタードスケール

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を、「G7」というコードで使うことを考えてみましょう。

(コードスケールとコードシンボルは表裏一体です。)

 

オルタードスケール自体は、スケール内に通常の5thを含んでおらず

それと半音の関係にある「♯11(♭5)」「♭13(♯5)」を含んでいます。

 

――これってコードとぶつかるのでは?

 

実際には、そのドミナントセブンスが通常の「V7」あるいは通常の「セカンダリードミナント」であれば、5th問題は無視して、オルタードスケールを選択してしまって構いません(※語弊はあります)。

 

ちょっと乱暴な言い方になりますが、

 

第一に、実はピアニストは大抵の場合、ドミナントセブンスのバッキングで「5th」を弾いていません。

第二に、仮に弾いていたとしても単音のアドリブであれば、♯11thや♭13thを使うことにそこまで躊躇する必要はありません。

 

また、それなりに慣れたピアニストであれば、ソリストの音づかいや息づかいから察知して、

(あ、こいつオルタード的なノリで演奏したいんだな)

と判断してくれます。

 

一方、次のような場合は、オルタードスケールはあまり適切な選択とは言えなくなります。

・♭VII7、♭VI7(サブドミナントマイナー)

・ブルース系のトニックとしてのI7、ブルース系のサブドミナントとしてのIV7

・メジャーキーのダブルドミナント(度数で言うとII7)

・裏コード(裏をオルタードにしたらほとんど表)

 

一応列挙してみましたが、この他にも「この場合は……」と細かいことを言い始めたら色々あるし、

 

正直あとは耳で分かると思います。

 

「頭でパターン分けしないと分からないんだ!」というタイプの人を切り捨てているわけではありません。

実際には、「普通はオルタードしない」ところで「あえてオルタードする」こともあり得るわけで、これ以上はその場の雰囲気なんです。

 

(とはいえもっと細かい話や、根拠について別記事で説明しようとは思っています。)

 

飲み会が「カジュアル」なのか「フォーマル」なのかは指定できるけど、「ネクタイの太さ」は勝手にしてって感じです。

「カジュアル」な飲み会に敢えてタキシードで行くギャグがやりたい(それが受け入れられる関係性)ならそれも勝手にしてって感じです。

 

……さあ、準備は整いました。

後は実際にオルタードスケールを演奏するだけです。

次は効率よくオルタードのノリに慣れるための具体的な練習方法をご紹介します。

(やっと本題です。)

 

マイナーストラクチャー

長々と講釈を垂れてしまったので、ここではまず結論から。

マイナースケールの「12♭345」を練習してください。

 

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これを「マイナーストラクチャー」と勝手に呼びます。

(僕が勝手に呼んでいるだけです。念のため。)

 

Dマイナーであれば、

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Gマイナーであれば、

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ようは、一般的なマイナースケールの断片ってことですね。

(マイナートライアドに、ルートから見て長2度と完全4度の経過音を入れたと思っても良いです。考えやすい方で。)

 

このマイナーストラクチャーを、次のようなパターンで演奏してみましょう。

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ここまでOKですか?

さて、例えば、以下のようなツーファイブの進行があったとしましょう。

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Cメジャーに対するツーファイブワンですね。

この時、マイナー系のコードは「Dm7」です。

当然ここで「Dマイナー」のマイナーストラクチャーを演奏すると、ピッタリ合いますよね。

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では次に、この「Dm7」というコード上で「Aマイナー」のマイナーストラクチャーを演奏してみましょう。

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Aマイナーの「1、2、♭3、4、5」は、Dドリアンの「5、6、♭7、1、2」と一致しますから、これも「Dm7」上でばっちりフィットするわけです。

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さて、それではこの「Aマイナーストラクチャー(略した)」をそっくりそのまま半音下げて、「A♭マイナーストラクチャー」を演奏してみましょう。

 

実はこれ、Gオルタードの「♭9、♯9、3、♯11(♭5)、♭13」と一致します。

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ということは、「G7」というコード上で「Gオルタード」を演奏する場合、

この「A♭マイナーストラクチャー」を使うとおいしい音を効率よく使えるということです。

 

これを先ほどの「Dm7」と合わせてツーファイブに当てはめてみると、

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・IIm7→完全5度上のマイナーストラクチャー=ドリアンの香り

・V7→半音上のマイナーストラクチャー=オルタードの香り

 

ということです!

 

「マイナーストラクチャー」ってかっこいいから言ってるけど、よく考えたら意味わかんないしちょっと恥ずかしくなってきました()

 

おすすめの基礎練習

コンセプトは伝わったでしょうか?

え、文字と譜例だけじゃよく分からない?

 

そんなあなたにこちらの動画!

今説明したことを、実際に音を鳴らしながら順を追ってわかりやすく軽快なトークで解説しています!(読者が遠のくタイプの煽り)

 

冗談はさておいて、この動画の後半で、先ほどの内容をさらに効率よく「基礎練習」に組み込むためのオススメの方法も紹介していますので、

ここまで読んで、今回ご紹介した内容を実践してみたいと思って下さった方は是非とも合わせてご視聴ください。

youtu.be

(ついでにチャンネル登録をポチッとお願いします。何卒。)

 

この練習のポイント

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もちろん、このフレーズはそのまま「リック」「持ちネタ」として、

実際の曲の中でツーファイブのコード進行にあてはめて演奏できます。

 

ぶっちゃけ「定番フレーズ」のひとつとして、プロの演奏家もたびたび使っています。

 

ここで「むむむ?」という反応を示したリック否定派の方に向けて、リックに関する誤解を解いておきます。

 

アドリブ演奏というジャズ語を用いた会話の中で、リックを使うことはパズルでもなんでもありません。

(リックがパズルに聞こえるとしたら、それを使った人がまだその段階(=カタコト)だからです。)

 

僕たちは普段、日本語や英語を使って会話をしていますが、そもそも「日本語」だってもともと存在している言語で、

その中で四字熟語や故事成語や慣用句なんかを当たり前のように引用していますよね。

 

それでも、それは「自分の言葉」ですよね。それと同じです。

 

 

ただし、この練習は「これを覚えれば簡単にオルタードが使えるようになるねー」というタイプのものではありません。

 

そもそも、「カタコト」じゃない状態にどうやったらなれるのか。

オルタードスケール、あるいはオルタードテンションの音づかいと、その響きを体得していくしかありません。

 

スケールの構成音を知りさえすれば、そのスケールをネイティブに喋れるようになる、というわけではないのです。

 

マイナーストラクチャーを使った演奏は、オルタードスケールにおける「おいしい音」の響きを感覚レベルで身に着けていくのに効率が良い、ということなのです。

 

 

この話をすると、たまに「結局のところ、Gオルタードと考えるべきなのか、A♭マイナーと考えるべきなのか」と悩む方がいらっしゃいます。

 

そうです、昔の僕です。

 

結論から言うと、「その悩みが出てくるレベルで悩んでんじゃねえ」です。

目的は音そのものを体得することですから、それ以前の段階で「頭をどう使っているか」はどっちでもいいです。

 

「オルタードがすらすら演奏できるようになったな」と思った段階で、「ちょっと指クセに頼り過ぎてるかな」と思ったらその時に改めて修正すればいいことです。

 

こと言語の習得においては、ある程度頭を使うことは大切ですが、はじめから最短距離はこれだ、と決め打ちすることは結果的には遠回りになることがほとんどです。

(全員がそうだとは言いませんが。)

 

ともかく、マイナーストラクチャーを使った練習は、ハーモニー感覚を養うトレーニングとしての意味合いも強いということですね。

 

そしてそのためにこそ、はじめのうちはパズルでも良いので、ガンガン実践で引用していくことをオススメします。

 

PDFダウンロード

思いのほか、長い記事になってしまいました。

今回の動画の内容の練習用譜面(PDF、各移調楽器対応)+iRealによる簡易バッキングトラック(6キーずつ、2パターン)用意しました。

 

譜面 in C

譜面 in B♭

譜面 in E♭

★バッキング(パターン①用)

★バッキング(パターン②用)

※今回、異名同音表記はかなりテキトーです。あらかじめご承知おきください。

※データに関するいかなるトラブル、ご要望にも対応致しかねます。

 

 

――いかがでしたでしょうか?

 

最近はYouTubeに力を入れていますが、動画とブログの両立をさせたくて、

 動画で言い足りなかった部分をブログで細かく書いたり、ファイルの共有をしたりしつつ、

音を出す説明は動画に頼るというスタイルはアリかなと思いました。

 

ジャズのアドリブ系の内容は連動させてやっていきやすいな、なんて考えております。

これからも出し惜しみなく情報をシェアしていきます。

 

今回の内容が少しでもタメになったと思って頂けましたら、YouTubeのチャンネル登録、ブログの読者登録ともども、よろしくお願い致します!

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★ジャズのアドリブ練習方法はこちらの記事も是非↓

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クロマティックミディアントの使用例をご紹介します

お疲れ様です! いきくんです。

以前の記事「クロマティックミディアント解説」で、日本であまり使われていない音楽用語「クロマティックミディアント」について書きましたが、今回はその実例をいくつかご紹介したいと思います。

 

 

帝国のマーチ

ジョン・ウィリアムズ作曲の、ダースベイダーのテーマとして有名なあれです。

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※コードは一部簡略化して表記しています。

 

Im→♭VImというパターンが登場します。この後続くメロディも、

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「G♭」の音がわかりやすく入ってきますね。

 

スターウォーズでもう一曲、「Emperor's Theme」という曲は、

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Im→♭IIImというパターンが登場します。

 

黒の夢

ゲーム音楽で面白いものがないかと探していたところ見つけたのが、「クロノトリガー」の「黒の夢」という曲です。

光田康典さんが作曲された、ノンファンクショナルでインターバリックなコード進行が特徴的な曲ですね。

 

イントロで「Cm→E♭m」、「E♭m→Bm」、「Bm→Gm」が登場し、曲中でも度々クロマティックミディアントの関係を利用したコードの接続がなされています。

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※採譜はざっくりです。

 

動画あります

これらの他にも、J-POP、クラシック音楽にもクロマティックミディアントの進行は多数登場します。

 

こちらの動画で、いくつかの使用例を実際に音を出しながら解説しております。

是非ご視聴&チャンネル登録お願い致します!!!

youtu.be

 

映画音楽と親和性の強いサウンドではありますが、そもそも初出はクラシック音楽ですし、他のジャンルでもいろいろな使い方が出来るということがお分かりいただけると思います。

 

また面白い使い方を発見したら動画&ブログでご紹介したいと思います!

 

クロマティックミディアント解説【映画音楽のようなサウンド】

お疲れ様です! いきくんです。

突然ですが、こんなサウンド聞き覚えありませんか?

★Cm→A♭m

「Cm」から「A♭m」、3度離れているのに同じコードタイプ!

そんなバカな!

 

 

はじめに

日本であまり浸透していない音楽用語で「クロマティックミディアント」(Chromatic Mediant)(クロマチックメディアントとも)というものがあります。

 

かぶれているわけではなく、僕がアメリカの音楽大学で理論を学んだからという理由なのですが、英語で理解している音楽用語の、日本語(芸大和声?)での対訳を知らないことが結構あるんですね。

 

で、このクロマティックミディアント。

英語圏ではWikipediaにも載っている周知の言葉なんですが、先日YouTubeに解説動画を出すにあたり、「日本でなんて呼ばれてるんだろう?」と小一時間ググってたんですが、どうも日本ではこの言葉使われていないみたいなんですよ。

 

というわけで、たぶん日本語の解説動画第一号です。みんなもっと再生して!笑

(海外の方ですが、僕より前にドクターキャピタルさんというノーステキサス大学の音楽教授の方がチャットモンチーの日本語での分析動画でこの言葉を使っておられました。)

 

実際には、日本の多くの素晴らしい作品にもクロマティックミディアントと呼ばれるコード進行は登場します。

他の理論の一部として解釈することも出来るので、あえて対訳を用意していない理由があるんですかね?

詳しい人いたら是非教えて下さい!

 

ミディアントとは 

前置きが長くなりましたが、本題です。

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スケールの第一音はトニック、第四音はサブドミナント、第五音はドミナント、ということは多くの方がご存知だと思いますが、

第三音、第六音を何というか、意外と知らない方もいるのではないでしょうか?

 

第三音…ミディアント

第六音…サブミディアント

 

と呼びます。

 

ダイアトニックミディアント

さて、Cメジャーキーにおいて、ミディアント、サブミディアント上に出来るコードについて考えてみましょう。

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要するにダイアトニックコードのIIImとVImですから、

 

ミディアント→「Em」

サブミディアント→「Am」

 

ですね。そしてポピュラー音楽の理論においては、これらはいずれもトニックに分類されるコードです。

主和音である「C△」との間に共通音を2つ持っていますね。

 

C△「ドミソ」

Em「ミソシ」

Am「ラドミ

 

★C△→Em

 

★C△→Am

第3音のオルタレーション

さて、それではこれらのコードの第3音を半音上げて、メジャーコードに変えてしまいましょう(ドン!)

 

★C△→E△

 

★C△→A△

このようなサウンド、映画音楽でよく聞く気がしませんか?

 

Cのキーにおけるミディアント、サブミディアントの音をルートに持ち、さらにC△との間に共通音を1つ持っているこれらのコードを、「クロマティックミディアント」(クロマティックサブミディアント)と呼びます。

 

同主調のミディアント

続いて、Cメジャーの同主短調である、Cマイナーキーの♭III△、♭VI△を見てみましょう。

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★C△→E♭△

 

★C△→A♭△

これらのコードも、C△との間に共通音を1つ持っており、「クロマティックミディアント」と呼ばれることがあります。

クラシック音楽においてクロマティックミディアントと分析される進行はこのパターンが多いです。

 

ダブルクロマティックミディアント

先ほどの♭III△、♭VI△の第3音を半音下げて、マイナーコードにしてしまいましょう!(ドン!)

 

★C△→E♭m

 

★C△→A♭m

これらは主和音との間に共通音がひとつもなく、「ダブルクロマティックミディアント」と呼ばれています。

 

ざっくりまとめ

Key of C major

・ダイアトニックミディアント:Em、Am(C△と共通音2、別のコードタイプ)

・クロマティックミディアント:E△、A△、E♭△、A♭△(C△との共通音1、同じコードタイプ)

・ダブルクロマティックミディアント:E♭m、A♭m(C△との共通音0、別のコードタイプ) 

 

これは、マイナーキーで考えても同じです。

 

Key of C minor

・ダイアトニックミディアント:E♭△、A♭△(Cmと共通音2、別のコードタイプ)

・クロマティックミディアント:E♭m、A♭m、Em、Am(Cmとの共通音1、同じコードタイプ)

・ダブルクロマティックミディアント:E△、A△(Cmとの共通音0、別のコードタイプ) 

 

こちらの動画ではマイナーキーの方も含めて、音を出して解説しています。

(チャンネル登録お願いします!!!)

youtu.be

クロマティックミディアントの定義

理論家によって少しずつ言う事が違っていて、クロマティックミディアントの定義ははっきりとはしていません。

 

クロマティックミディアントの「♭III△」や「♭VI△」はモーダルインターチェンジコードとして登場するし、

「III△」や「VI△」はセカンダリードミナントのトライアド版として登場するコードですが、

これらの文脈をあまり強く持たないとき、「あ、クロマティックミディアントだな」と感じます。

 

本来は、ダイアトニックなミディアント(サブミディアント)のオルタレーションであり、主和音I(Im)のトニック機能が拡張されている状態であるとされています。

 

が、実際には先ほどの「ざっくりまとめ」のように、あるコードと、上下に長・短3度のノンダイアトニックなコードを組み合わせた進行を、たとえ出発点がドミナントやサブドミナントであっても「Chromatic Mediant Relationship」と表現することもありますし、

 

既存の機能和声の枠組みを超えてインターバリックなコード進行を組み立てるときにも使われる手法です(クロノトリガーとか)。

 

逆に、「クロマティックミディアント」を第四の(T、D、SDに次ぐ)機能として考えようという内容の論文もあります。

 

当たり前の話ですが作曲家は全て定義に従って作曲しているわけではなく、定義を利用して創作活動をしている訳です。ナポリの和音なんかもそうであるように、様々な例外はあって然るべきです。

 

いずれにしても、クラシック音楽にも登場し(パッと思いついたのはブラームス、チャイコフスキー、ドビュッシー)、ドラマチックなサウンドで、とりわけ映画音楽において非常に多用されているコード進行です。

 

まとめ

突き詰めるとネオリーマン理論なんかとも繋がっていくので、面白いなと個人的には思っています。

 

日本ではこの言葉自体はあまり使われていませんが、決して日本が遅れているわけではなく、日本のゲーム音楽なんかはこちらでもよく研究されていますし、その中にもクロマティックミディアントの進行が登場しています。

 

もしかしたらこの言葉をあえて使っていない理由があるのかも知れませんが、こうやって体系立てて覚えておくと、作曲や分析で必ず活きてくると思うので、何かしらに役立てて頂ければ幸いです。

 

今回はクロマティックミディアントとは何か、という説明に終始しましたが、次回は実際の使用例を、動画&ブログで紹介してみようと思います!

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ジャズアドリブの具体的な練習方法PDF

お久しぶりです。いきくんです。

真っ先に収益化出来たということもあり、あれこれ手を出す中でブログがすっかり止まっておりました。

 

最近は専らYouTubeチャンネルに力を入れており、主に土曜日にはジャズのアドリブ練習方法に関する動画を投稿しております。

www.youtube.com

(ついに500人突破して折り返しです! チャンネル登録切実にお願いします!)

 

 

ジャズを始めてみたい方、うまくいかなくて悩んでいる方に、日本ではなかなか手に入らない具体的な練習方法を惜しみなくシェアしていくつもりです。

(よくわからんハウツー本に〇千円とか出す暇があったらチャンネル登録した方がいいですマジで(小声))

 

先日投稿した動画で、ジャムセッションでも定番のスタンダードナンバー、チャーリーパーカーの「Confirmation」のコード進行を用いた、コードトーン[3-5-1-7]の具体的な練習方法をご紹介しました。

 

その練習用譜面のPDFを、C譜、B♭譜、E♭譜それぞれ用意したので、公開しておきます。是非ダウンロードして練習に役立てて下さい。

 

動画はこちら!(2本あります。)

youtu.be

 

youtu.be

 

ダウンロードはこちら!

Confirmation 3-5-1-7 C譜

Confirmation 3-5-1-7 B♭譜

Confirmation 3-5-1-7 E♭譜

 

あ、もちろん無料です(笑)

実際には、ちゃんとまとめて教材にしたら商品として成り立つ情報ではありますが、僕はそれを好き勝手に発信して、皆さんに好きなように役立ててもらって、

僕が帰国した暁にはその中から僕の情報に価値があると思ってくださった方々が、僕のライブに足を運んでくださるという仕組みになっております、ハイ。

 

それでは、また次の記事でお会いしましょう!

ジャズのアドリブに興味がある方はこちらの記事も是非↓

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メロディとコード進行は、お互いに独立している瞬間もありますよ

お疲れ様です! いきくんです。

今日は、メロディとコード進行はお互いに独立していることがあるよ、というお話です。

 

コードは置き換えられる

先日某地方アイドルグループの楽曲の編曲に携わっておりました(詳しくは書けませんが)。

その曲のサビの冒頭はトニックで、メロディは「5→1」。

つまり、キーがCならコードは「C」でメロディは「ソ、ド」です。

 

そして、オリジナルのサビは、このトニックから始まる8小節のメロディが4回繰り返されています。

 

さて、コードとしては、もともとは普通に「I(C)」を想定しているわけですが、

4回も繰り返すので、毎回同じでは童謡のような雰囲気になってしまいます。

 

というわけで、同じメロディですが、

・「I/3(C/E)」転回形にして雰囲気を変えます。

・「VIm7(Am7)」トニックの代理コードで平行調の雰囲気を借ります。

・「IV(F)」add9的な響きになりますが、全然アリです。

 

という感じで、毎回コードを変えてしまいました。

 

このように、もともとは同じ響きを想定していた同じメロディでも、編曲の段階で別のコードに付けなおし、雰囲気を変えてしまうことが可能です。

 

メロディと合わないコード

さて、それだけではありません。

 

先ほど示した例は、コードを付けなおした後も、メロディがコードトーンかテンションに該当するので、縦の響きとしてクラッシュしていません。

ある意味、付け替えられて当然ですね。

 

ですが、

・メロディが全体としてはっきりとひとつの調性の中にとどまっている

・メロディの横の流れが強力な推進力を持っている

・同じメロディを何度も繰り返して聞き手に印象づけている

 

ような場合、メロディと関係なく、コード進行側の文法のみに基づいて違うコードに変えてしまうこともあります。

 

例えば、トニックの代理コード「#IVm7♭5」なんかはよく使われます。

今回も、2回目のサビで使用しました。

 

メロディ「ソ→ド」の「ソ」という音は、「#IVm7♭5=F#m7♭5」とは必ずしも合致していません。

が、メロディとしては「ソ」が「ド」にたどり着くという文法上の意味を持っています。

(たどり着いた「ド」であれば「F#m7♭5」でもクラッシュしませんね。)

 

また、もともとIが来る場所ですから、コード進行の文法上では「#IVm7♭5」で代理可能です。

 

このように、メロディとコードは必ずしも常に二人三脚で歩んでいるとは限りません。

極端にクラッシュしていなければ、ポップスではよく使われる手法です。

 

注意点と実例

じゃあ何をやっても良いのか、というとそういうわけではありません。

 

あくまで、もともと「トニック」で「ソ→ド」というメロディだった、という裏付け(骨格・原型)があって、

その上で、実際に鳴らすコードをメロディと関係なく独立して変えてしまうということです。

 

有名な曲で実際にコードだけが独立して付け替えられている例としては、

 

「ようこそジャパリパークへ」のCメロ(ララララ~)で、

王道進行「IVmaj7→V7→IIIm7→VIm7→IIm7→V7→I→(I7)」で、完全にひとつの調性の中に収まっているメロディが演奏されているなか、

 

実際には「VIm7」を、次のコードに対するセカンダリードミナントの裏コードである「subV7/II(度数で言うと♭III7)」に変えています。

 

これは、メロディとは必ずしも合致しないコードですが、コード進行上の文法に基づいて、この一瞬だけコードが独立して動いている分かりやすい例です。

 

というわけで、曲の中では、メロディ、コードともにお互いの横の流れのみに基づいて独立している瞬間もあるのです。

 

「なんでこのメロディでこのコードなんだ!?」

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と思ったときは、そういう視点を持ってみると、分析できるようになるかも知れません。

【作曲・編曲テクニック】解決を遅らせて挟み込むコード4選

お疲れ様です! いきくんです。

今回は、作曲や編曲で使えるコード進行のパターンをご紹介します。

 

もとのツーファイブワン 

以下のような、II-V-Iで解決するコード進行があったとします。

 

★Dm7→G7→C

 

どこかで聞いた覚えがありますね。

つ大沢議員

 

IIm7→V7ときたら、普通はそのままIに解決するものですが、

今回は、Iに解決はするものの、それを少し先延ばしにして、

一瞬違うコードを挟み込むというテクニックをいくつかご紹介したいと思います。

 

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①サスフォー

★Dm7→G7→Csus4→C

定番ですね。J-POPでも頻出のパターンです。

 

②サブドミナントの転回形

★Dm7→G7→F/C→C

IVコードの「F」を第二転回形にすると、サスフォーと近い発想が生まれます。

イントロやアウトロなんかでもよく登場します。

 

③サブドミナントマイナーの転回形

★Dm7→G7→Fm/C→C

②と同じ発想ですが、IVmの「Fm」を第二転回形にするのもありですね。

哀愁のある雰囲気を演出することが出来ます。

 

ちなみに、「Fm」というコードのコードトーンの5thが半音上がる(変位する)と、「D♭」になりますね。

これが、ナポリの6と呼ばれるコードです。

 

もっとも、厳密にはナポリの6はトニックに進行してはいけないことになっているはずですが、実際には♭IIコードがトニックに進行するパターンは非常によく見られます。

また、メロディが「ド」を演奏している場合、「D♭maj7」の7thとなって非常に気持ちよく響きます。

 

★Dm7→G7→D♭maj7→C

 

④トニックディミニッシュ

★Dm7→G7→Cdim7→C

なかなかオシャレですよね。ちなみに半音下のドミナントセブンスを代理コードとして使うこともあります。

 

★Dm7→G7→B7→C

 

いかがでしたでしょうか?

気に入ったものがあれば是非使ってみて下さいね!

それぞれ個別に掘り下げる記事もいつか書けたらいいなあ。

【小技】メジャーコードは第一転回形にするだけで手軽に素敵になります

お疲れ様です! いきくんです。

今回は、作曲や編曲をしている人に向けたお役立ち記事を書いてみました。

 

はじめに

作曲をしている人、とりわけDTMをやっている人で、

メロディとコード進行は決まったけれど、いざオケをつくるとなったき、

コードのボイシングの引き出しが少なくて悩んでいる人は結構いるのではないでしょうか?

 

今回は、シンプルなメジャーコードを第一転回形にするだけで、手軽に素敵な雰囲気を作ることが出来ちゃうよっていう小技をひとつご紹介したいと思います。

 

第一転回形とは

まず一般的な説明としては、「C」というコードがあった場合、

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ルートの「ド」が一番下に来ている状態が基本形

3rdの「ミ」を一番下にしたものが第一転回形

5thの「ソ」を一番下にしたものが第二転回形です。

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で、タイトルにもある通りメジャーコードを第一転回形にするだけでとっても素敵に……なるかあ?

疑いの視線を感じる。ちょっとだけお待ちください。

 

基本形のピアノ・ボイシング

「C」というコードを最もシンプルに鍵盤で演奏するとしたら、

左手で「ド」を鳴らして、右手で「ソ、ド、ミ」とするのが一般的ですね。

 

(いや、ピアニストからしたら「そんな簡単すぎること俺は今更しないよ」って言われるかもしれませんが、あくまで一般論です。)

 

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「ソ、ド、ミ」ってことは第二転回形じゃないの?

と思った方、大事なのは一番下の音です。この場合は左手で「ド」を弾いていますので、基本形です。

 

素敵な第一転回形

さて、ということは、第一転回形にするには左手を「ミ」にする必要がありますね。

それだけでも第一転回形になりますが、「素敵な第一転回形」にするために、右手もちょっとだけ変えてみましょう。

 

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はい、どうでしょう。

左手に色のついた音が来て、右手は透明感のある完全音程のみを演奏している感じ。

 

 

コードとしてはただのメジャーコードの第一転回形ですが、ちょっと素敵じゃないですか?

 

I-IV-V-Iで使ってみよう

CメジャーキーのI-IV-V-Iを、この素敵な第一転回形でボイシングしてみましょう。

最終的に解決する「C」のみ基本形にすれば、あとは全部第一転回形に変えてしまって問題ありません。

 

こんな感じ。

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聴き比べてみましょう。

 

★普通のボイシング

 

★素敵な第一転回形

 

もちろん、ボイシングはケースバイケース。

TPOが大切ですが、今日から使える小技ということでストックしておいても損はないと思います!

 

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

 

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ジャズがよくわからない人はとにかくハッピーなやつを聴いてみて

お疲れ様です! いきくんです。

たまには、ジャズの動画を紹介する系の記事も書いてみようかな、と。

 

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ジャズは難しい?

ジャズって難しくてよくわからない、という意見をよく聞きます。

 

もちろん、初めから複雑なハーモニーに心地よさを感じられる人もいると思います。

ですがそうではない人が多いのも事実。

 

やれジョンコルトレーンだとか、オーネットコールマンだとかをいきなり聞かされて、「好きになりなさい」と言われても難しい場合が多いです。

(僕は今となっては二人とも大好きですが。)

 

ところが、よくある「初心者向け」を謳う記事は(日本で言うところの)モダンジャズの名盤しか紹介していません。

しかも、「これを知らずしてジャズを語るなどけしからん」みたいな空気感。

 

僕はジャズを「専門」にしていますが、J-POPやボカロ、アニソンにハマっていた&吹奏楽部ガチ勢だった中学時代、マイルスデイヴィスですら意味不明、チャーリーパーカーですら意味不明でした。

 

クラシック音楽が好きな人だって、いきなり現代音楽にはまる人もいれば、バッハ気持ちいいー!って人もいるわけです。

J-POP好きだって、サカナクションが好きな人もいれば、ゆずが好きな人もいるわけです。

 

一括りにして考える必要はありません。

巷のジャズおじさん、自称ジャズフリークみたいな人の「初心者はまずこれを聴きなさい」という言葉に耳を貸す必要もありません。

 

初めて聞いたジャズがボカロで、それを好きになったなら、それがあなたにとってのジャズで良いのです。入り口は人それぞれです。

 

 

ハッピーなジャズをご紹介します

さて、難解なモダンジャズを聴いて「意味不明」と思っている皆さん、意味なんて考えなくて大丈夫です。

 

(余計な意味を考えて聞いている人は、ジャズを難しい音楽だと感じているようです。逆に、余計な意味を考えるのが好きで、音楽を聴いていないのに意味だけ語りたがる自称ジャズマニアもいるようです。実は、余計なことを考えなければ、ハッピーなジャズでも、現代的で複雑なジャズでも、同じように聴くことが出来ます。……が、その話はまた今度。)

 

騙されたと思って、通勤通学の電車で今日ご紹介した曲をBGMにしてみて下さい。

ちょっと楽しい気分になれるかもしれません。

 

もちろん、そうでない人もいると思います。

この世界は自由です!

 

ともかく、この記事では独断と偏見でハッピーな音楽をご紹介します!

 

ウンチクは最低限に、とにかくリズムに乗って聞いてください。

 

スコット・ハミルトン

大御所テナーサックスプレイヤー。メインストリームなサウンドに定評があります。

www.youtube.com

 

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ジェイソン・アニック

バイオリニストのジェイソン・アニックがリーダーを務める、アメリカで大人気のバンド「リズム・フューチャー・カルテット」。ジプシー・ジャズの編成による、ビ・バップの語法での演奏が特徴です。

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バディ・デフランコ

バディ・デフランコはビ・バップのクラリネットプレイヤーですが、このアルバムではセプテットの編成で、スウィング時代の名曲を超ハッピーに演奏しています。

youtu.be

 

いかがでしたでしょか?

今後も定期的に、日本ではあまり紹介されていないジャズプレーヤーなんかを紹介していければと思います!

メトロノームを四分音符で鳴らして、8分の7拍子をとってみよう

お疲れ様です! いきくんです。

今回はメトロノームの使い方に関する内容です!

 

8分の7拍子とは

一般に良く知られている曲は、その多くが「4分の4拍子」です。

1小節に、四分音符が4つ入る拍子ですね。

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8分の7拍子とは、1小節に八分音符が7つ入る拍子のことです。

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メトロノームを八分音符で

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このような8分の7拍子の曲を練習するとき、みなさんはメトロノームをどう鳴らしていますか?

 

恐らく、多くの人はメトロノームを八分音符と捉えていると思います。

 

八分音符=240で演奏してみましょう。

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もちろんこれでもいいのですが、今日はメトロノームのおもしろい使い方をひとつご紹介します。

 

メトロノームを四分音符で

そのおもしろい使い方とは、メトロノームを四分音符で捉える方法です。

 

え?

8分の7拍子なのに、メトロノームを四分音符で捉えたら割り切れなくてズレちゃうじゃん!

 

はい、その通りです。

1小節ごとに、必ず1拍目にメトロノームの「カチッ」が聞こえるようにしようと思うと、メトロノームを八分音符で捉えるしかありません。

 

ですが、この練習では、メトロノームの「カチッ」が1拍目に聞こえるのを、2小節ごとにしてしまうのです。

 

具体的には、メトロノームと合うのが、

1小節目の八分音符の1、3、5、7個目、2小節目の八分音符の2、4、6個目ということになります。

 

四分音符=120で演奏してみます。

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1、3小節目の頭で、メトロノームと1拍目が合っているのを感じてみてください。 

 

コツとしては、はじめからメトロノームを鳴らして合わせるのではなく、

まず、ゆっくり自分で手拍子しながら歌って、どこが「カチッ」と合うタイミングなのかを把握してからメトロノームを使いましょう。

 

まとめ

もちろんこれはあくまで練習で、実際にはちゃんと2+2+3(この曲の場合)のフィールで演奏する必要があります。

ですが、なんとなく雰囲気でリズムをとるのではなく、カッチリとタイトに演奏できるようになるためにはこの練習は有効です。

 

最近は吹奏楽コンクールの課題曲なんかでも、8分の7拍子のような変拍子が平気で出てきますからね。

吹奏楽部の人で、変拍子に取り組んでいる人は、是非このメトロノームを四分音符で感じて演奏する練習を試してみて下さい。

 

また、ジャズをやっている人は、メトロノームを四分音符で感じながら、8分の7拍子でアドリブをとる練習もしてみて下さい!

 

では、今回はここまでです。

また次の記事でお会いしましょう!

 

【音楽理論の誤解】音楽のしくみと方法論を区別しよう

お疲れ様です! いきくんです。

今回の内容はうまく伝わるかどうかわかりませんが、頑張って書いてみます。

 

「しくみ」としての音楽理論

今回するのは、音楽の「しくみ」と「方法論」を区別しようというお話です。

わかりやすい例でいくと、「スケール」について。

 

Cメジャースケール

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このように「全全半全全全半」という並びのスケールを「メジャースケール」と呼ぶことや、

3度の音が明るい性質を持っていたり、7度の音が主音を導く力を持っていたり、

4度と7度の間にトライトーンが形成されていたり……。

 

これらは、「音楽のしくみ」の話をしています。

 

Cメジャースケールを「レ」から始めるとDドリアン、「ミ」から始めるとEフリジアン、というように、教会旋法を見出すことが出来ます。

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また、ポピュラー音楽にはコードスケールという考え方があります。

例えば「Cmaj7」と「Cリディアンスケール」が表裏一体である、という事実。

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これらは全て「しくみ」の話になります。

 

「方法論」としての音楽理論

しかし、スケール(あるいはモード)に基づいて「作曲する」という行為は音楽の「しくみ」でしょうか?

 

ポピュラー音楽における「コードスケール」で、「Cmaj7」に「Cメジャースケール」あるいは「Cリディアンスケール」を想定してメロディを書いたりすることは「しくみ」でしょうか?

 

これは「Cメジャースケール」とは何か、「Cリディアンスケール」とは何か、ではなく、そういうスケールのしくみを利用するという話ですね。

 

【しくみ】

・Cメジャースケールを「レ」から始めると「Dドリアン」ということ

・「Dm7」と「Dドリアン」が表裏一体であるという音構造

 

【行為】

・「Dドリアン」モードを利用して曲を作る

・「Dm7」に「Dドリアン」を想定してアドリブソロをとる

 

この場合「音楽のしくみ」を材料にして、何かしらの音楽表現やコミュニケーションを図る「行為としての音楽」の話をしていますよね。

 

これらはどちらも音楽理論に関係する話ではありますが、前者は「しくみ」、後者は「方法論」の話で、その目的が違うものなのです。

 

「しくみ」には厳密な定義づけや裏付けが必要不可欠です。

一方「方法論」として音楽理論を利用する場合は、むしろ創造性の方が重要です。

 

「しくみ」と「方法論」の双方向性

①音楽理論は(物理的な根拠も含む)音楽のしくみの解明によって成り立っている。

②音楽のしくみを方法論として利用して、作曲やアドリブ演奏がされている。

 

ここまでは大丈夫でしょうか?

 

さて、ですが実際には、誰もがこの順序に則って音楽をしているわけではありません。

構造を理解するうえで、まずは「しくみ」と「方法論」を分離する必要がありました。

 

ただし現実は「しくみ」→「方法論」への一方通行ではありません

 

③音楽表現(作曲作品や、アドリブソロなど)を分析する際も、やはり材料として音楽の「しくみ」を使い、音楽理論は適時補強、更新され続ける。

  

つまり「しくみ」と「方法論」は区別されるだけでなく、

 

「しくみ」→「方法論」→<音楽表現>→「分析」→「しくみ」

 

という円環をなしているわけです。

 

おわりに

「音楽理論」と一口にいっても「しくみ」や「方法論」は区別されるべきで、

両者の目的は明確に異なります

広義にはどちらも「音楽理論」なので、同じ用語を使っていて、それによって混乱してしまうだけなのです。

 

ここまでは事実のお話。

 

ただし今回の記事は、その具体的な解釈や説明の仕方については僕の個人的な見解によって書かれていますので、

人それぞれ自分なりの解釈で捉え直して頂いて問題ないと思います。

 

重要なのは、「区別するべきところは区別する」ということですね。

音楽について考えるときの不自由さが、ひとつ消えると思いますよ!

 

【不協和音?】「B/G7」というコード、どう聞こえますか?

お疲れ様です! いきくんです。

今回も理論的な説明は最低限に、サクッとお話ししてみようかな、と。

 

このコード、どう聞こえる?

 

 

はい、どうでしょう?

不協和音に聞こえた方も、そうでない方もいると思います。

 

このようなコードが鳴っていました。

B/G7

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Bメジャートライアドが、G7の上で鳴っている状態です。

 

ポリコードの一種にも見えますが、ドミナントセブンスに対して「Maj7」の音が乗っているという、原型の分からないコードとなっています。

 

縦の響きだけで考えた場合、ドミナントセブンスのはたらきが阻害されている上に、

「F」と「F#」が♭9音程を形成しているので、不協和に聞こえるという人もいると思います。

 

横の流れで聞いてみよう

ところが、このように横に流れて聞いてみるとどうでしょう?

★Dm7→B/G7→Cmaj7

 

スムーズに聞こえませんか?

もちろん、人によってはこれでも受け入れられない場合もあると思います。

 

フレーズを乗っけてみると、さらに緩和されるかな?

 

「ファ#」という長7度の音さえ鳴っていなければ、「G7#5(あるいは♭13)」がトニックへ解決する動きなのですが、

 

B/G7

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この「ファ#」が謎ですね。

 

結論から言うとこれは、解決先である「Cmaj7」に対して、分数コードの分母と分子がそれぞれ別の方法でアプローチしている状態です。

 

・分母は普通のドミナントセブンスからの解決の動き(G7→C)

・分子は半音下からアプローチする動き(B→C)

 

縦の響きだけで見たとき、「B」と「G7」はぶつかってしまうコード同士ですが、

横の流れで考えたとき、この場合は大雑把に分けると同じ目的を持ったコード同士、ということになります。

 

よって、この「B/G7」というコード自体は不協和音に聞こえるかも知れませんが、大きな流れで捉えるとちゃんとした意図が聞こえてくるのです。

このような手法は、むしろちょっとしたスパイスとして有効だったりします。

 

ちなみに「B」は「B7」と考えると、「Cmaj7」の代理コードでありアッパーストラクチャーの「Em7」に対するドミナントとしてのはたらきも持っていますね。

これを利用したリハーモナイズもジャズでは定番だったりします。

 

まとめ

もちろん、このコード進行がスムーズに聞こえる理由は、他にもいろいろな説明の仕方が可能です。

 

コードありき、コードスケールありきで全てを考えていると、このようなコードが出てきたときに「意味わからん!」となってしまいますが、

 

横の流れとしての各小節や拍が持っている文脈に耳を向けられるようになると、新しい世界が見えてくるかもしれません。