いきいき音楽科

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僕の好きなコード進行とディミニッシュによる代理の拡張【UG】

単発 | 無料記事 | 著者:いきくん

久しぶりにブログ記事を投稿します。

これからしばらく、いきいき音楽科のYouTubeチャンネルに過去に投稿された動画を引用して、内容のまとめやアップデート情報を付け加えたものを書いていこうと思います。

 

今回振り返る動画はこちらです!

「僕の好きなコード進行とディミニッシュによる代理の拡張」

youtu.be

 

個人的に好きなVII7

0:45~

ワンメジャー セブンセブンス ワンメジャー

「5・7・5ですね」というコメントをいただいたときは天才かと思いました。

 Key of C majorのディグリーネームで I△ → VII7 → I△ は、コード表記すると「C△ → B7 → C△」です。

この進行、個人的に好きでよく使ってしまいます。

 

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特に、この進行上でメロディに「レ」をキープするサウンドをVampで使いがちなのですが、

他にも「ソ」をキープ(5→♭13→5)したり、ドをキープ(1→♭9→1)したり、B7sus4にして「ミ」をキープしたり、いろいろな応用が考えられます。

 

深堀

「B7→C△」は短調における偽終止の形。つまり、iii度調(Key of E minor)のV7→♭VI△(=属調のIII7→IV△)。これの解決先を主調(Key of C major)のI△にして、主調目線の分析で「V7 of III → I△」です。が、今回はそういったストレートな解釈の分析ではなく、創作の手法論が中心となります。

 

今後の記事でも「深堀」をたまに挟みますが、分からない用語がある場合ここはいったん飛ばしてとにかく試してみようという読み方も大歓迎です。

 

トニックディミニッシュ

この進行、ジャズ演奏における代理の発想で「 C → Cdim7 → C 」という補助ディミニッシュ(Auxiliary  Diminished)の仲間として使われることもあります。

 

例えば「Stella by Starlight(星影のステラ)」という有名なジャズスタンダードで、オリジナルは、

Cdim7 | Cdim7 | Dm7 | G7 |

となっている冒頭部分。ジャズのセッションでは、

F♯m7-5 | B7 | Dm7 | G7 |

と演奏されます。(ちなみに実際のソロにおいてはこの両者を自由に置き換えて演奏したりもします。)

 

これについては、別の動画(↓)で少し関連する内容を取り上げていますので、興味がある方は併せてご視聴ください。

 

この、ディグリー表記で「Idim7」となるコード、ジャズ理論の通称で「トニックディミニッシュ」と呼ばれることがあります。

 

ディミニッシュコードの特徴

①ディミニッシュコードの構成音は、正確に表記するともちろんそれぞれ変わりますが、鍵盤上で「Cdim7、D♯dim7、F♯dim7、Adim7」は異名同音でお互いの転回形と同じ音を押さえることになります。

そのため、ポピュラー音楽でコードサウンドをひとつの塊として聞くような場面では、お互いに置き換えても大枠での進行感は保たれます。

 

②ディミニッシュコードは、ドミナントセブンスコードのルート省略形として機能します。例えば「Cdim」は、その長3度下の音をルートとして加えると「A♭7」というコードの仲間と捉えることができます。

 

置き換え可能性の拡張

この2点を掛け合わせて、

 

Cdim7

D♯dim7(E♭dim7)

F♯dim7(G♭dim7)

Adim7

という置き換え可能性を、

 

Cdim → A♭7

D♯dim → B7

F♯dim → D7

Adim → F7

の右側、ドミナントセブンスコード側まで拡張してみようというのが今回の動画の趣旨です。

 

試してみよう

このとき「ディミニッシュセブンスならば、ドミナントセブンス側は常に♭9をとるべきでは」というのは理屈上正しいのですが、

ここではあらかじめひとつのオリジナル状態を決めておいて、

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メロディを固定したうえでのリハーモナイズという実践的な状況を想定して、まずは一通り試してみましょう。

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C→A♭7→C

個人的にこの進行もとっても好きです。

 

深堀

僕のいた大学ではこの進行はSpecial Function Dominant(文中ではSpecial Function Cadence)という何とも愛らしい表現で説明されています。

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【引用】Harmony 4 - Alex Ulanowsky

一方で、F/A→C/Gを経過的に繋ぐ増六の和音にルーツを見る話や、subV7/Vとして、Altered Subdominantとして、また「現代の音楽では」と断ったうえでの表現など、見落とされがちですが意外と丁寧な説明が試みられています。

 

C→B7→C

これは冒頭でも出てきた進行で、僕のイチオシのパターンです。

 

C→D7→C

これもアリですが、何も考えずに基本形で鳴らしたりするとちょっと微妙な感じもしますね。別なやり方として、C→D7/C→Cにしてリディアンのモーダルな雰囲気で処理することも可能だと思います。

 

C→F7→C

こちらはすごく普通な進行としてあり得ますね。ブルースの「I → IV → I」であったり、メロディックマイナーの「IV7」であったり、普通に生活していて出会うパターンです。

 

個人的には、「こう考えればこう出来る」という発想法や手法の話と、それによって生み出された進行が別の理論的背景から成立するものになるという”ぐるぐる回っている感”(表現下手ですまん……)にとてもワクワクします。

 

インプロヴィゼーションへの応用

A♭7

B7

D7

F7

 

というコードは、それぞれツーファイブ分割すると、

E♭m7 - A♭7

F♯m7 - B7

Am7 - D7

Cm7 - F7

 

になります(もちろん選択肢としては♭5も可)。

 

ジャズのアドリブのアイデアとして、トニックコード上でトニックディミニッシュを演奏するというものがあります。

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このとき、先ほどの発想を持ってきて、トニックコード上で上記のどれかのツーファイブを演奏するのも応用としてあり得ます。

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結果的にいわゆるアウトサイドなフレージングですが、ただ無作為に音を選んでいるわけでは(それもそれでいいのですが)なく明確な発想法があっての音選びなので、筋の通ったサウンドを作ることが出来ます。

 

これと同じ発想のリハモ、ギタリストのKurt Rosenwinkelが何かのバラードのソロのラインで弾いていて、感銘を受けて真似し始めたのですが元ネタが思い出せないので思い出したら追記します。

 

 

そんなわけで今回は「僕の好きなコード進行とディミニッシュによる代理の拡張」という動画を振り返ってみました。

今後も定期的に過去動画の振り返り&アップデート記事を書いていきますので、たまに覗きに来ていただけると嬉しいです!

 

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