【前編】イキスギコードの正体をわかりやすく解説します
お疲れ様です! いきくんです。
今回は、昨晩のニコ生「イキスギコードを理論的に正しく説明します」をわかりやすく再編して記事にします。
はじめに
まず、イキスギコードは造語です。他にも「ブラックアダーコード」が正式な名称だという主張もありますが、僕としては、各自好きな呼び方で覚えればいいんじゃないかと思っています。
なぜなら、このコード自体は「日本で独自に発見された新しいコード」というわけではなく、もとからあるものだからです。
それがJ-POPやアニソンで効果的に使われていることが最近注目されて、
有名配信者の方が「イキスギコード」と名付けたことで盛り上がっている、という感じです。
こういう盛り上がりは個人的にとてもいいことだと思っています。それについてはこちらの記事で言及しています。
本題です!
イキスギコードについて考える前に、次の2つを切り離しておきましょう。
①「コード」としてのイキスギコードの構成音
②曲の中での(コード進行上での)効果的な使われ方
この記事は前・中・後編に分かれています。前・中編では①を、後編では②を扱います。
さて、「コード」としてのイキスギコードの構成音を考えるには、大きく分けて2通りの道順があります。
まず一つは、オーギュメントセブンスの転回系という考え方です。順を追って説明します。
オーギュメントコードとは
まずはトライアド(三和音)でお話しします。
オーギュメントコードとは、メジャーコードの第5音が半音上がったものです。
こちらがCメジャートライアドで、
こちらがCオーギュメントトライアドです。
オーギュメントトライアドの使われ方として、一番有名なものはこれですね。
C→Caug→C6→C7→F
オーギュメントトライアドは、各コードトーンの距離が全て長3度になっています。
1オクターブをちょうど3等分ですね。
ということは、「Caug」も、「Eaug」も、「A♭aug」も、実際の構成音は全く同じということになります。
この世界にオーギュメントトライアドは、実質4種類しかない!
ドミナントセブンスコードとは
次に、ドミナントセブンスコードについて知っておく必要があります。
ドミナントセブンスコードは、メジャートライアドに♭7の音を乗せたものです。
このコードは、5度下のコードに解決したいという欲求を持っています。
例えば「C7」であれば、「F」や「Fm」に解決する力を持っています。
C7→F
C7→Fm
ここで、テンションについてお話ししましょう。
テンションとは、コードトーンにさらに音を上乗せして、コードに特徴的な響きを付け加える音のことです。
先ほどの「C7」に、テンション9thと13thを乗せてみるとこのようになります。
Gm7→C7(9,13)→Fmaj7
キレイな響きですね。
ただ、ドミナントセブンスコードの場合は、オルタード(変化)したテンションを乗せてもカッコよく決まります。
テンション9thを半音下げて♭9thに、13thを半音下げて♭13thにしてみるとこうなります。
Gm7→C7(♭9,♭13)→Fmaj7
カッコいいですよね。
ドミナントセブンスのテンションは♭してもカッコいい
オーギュメントセブンスコードとは
オーギュメントトライアドに♭7の音を乗せたコードが、オーギュメントセブンスです。
以下の例は「Caug7」ですが、同じ意味で「C7#5」という表記も可能です。
これは古いスタイルのジャズなんかでも、よく出てくるコードです。
このイケメンが2個目とかで弾いているコードがそれですね。
ところで「C7#5」って、ようは「C7♭13」と同じことですよね。
つまり、オーギュメントセブンスは、ドミナントセブンスの仲間のコードなのです。
というわけなので、当然「Caug7」は「F」に解決出来ます。
Gm7→Caug7→F
さて、このオーギュメントセブンスというコード。
実は、イキスギコードの正体です。
厳密にいうと、巷でイキスギコードと呼ばれているコードと、オーギュメントセブンスは完全に同じ構成音を持つコードです。
構成音が全て同じということは、基本的には響きや持っている力は同じですから、
オーギュメントセブンスコード=イキスギコードと解釈しても問題はありません。
オーギュメントセブンスコードと、イキスギコードは構成音が完全に同じ
ただし、イキスギコードを正しく理解するためには、もう少しだけ補足が必要です。
オーギュメントセブンスを転回する
転回とは、ドミソをミソドにしたり、ミソドをソドミにするように、コードの構成音の並び順を入れ替えてやることです。
では、先ほどの「Caug7」の転回形を見てみましょう。
最終形態である第三転回形を見て下さい。
はい、これがまさしくイキスギコードです。
つまり、オーギュメントセブンスの第7音がベースに来て、その上にオーギュメントトライアドが乗っている状態ですね。
そして、序盤で説明したように、オーギュメントトライアドはこの世界に4種類しかありませんから、以下のどの表記にしても構成音は同じです。
オーギュメントセブンスコードの第三転回形と同じ種類のコード=イキスギコード
今回はCaug7を例にお話ししてきましたが、同じことをGaug7で考えてみましょう。
これらが、Fの音をベースに持つ、「Gaug7の転回形」から考えることが出来るイキスギコードです(表記が違うだけで、構成音は全て同じです)。
田中秀和さんの「灼熱スイッチ」のサビの一発目のコード「Gaug/F」はまさしくこれですね。
(もちろんBaug/F表記の方がしっくりくるという人もいると思います)
おわりに
さて、今回解説したのは、「コード」としてのイキスギコードの正体に、オーギュメントセブンスの転回形という道順でたどり着く方法です。
ただ、イキスギコードの真髄に触れるにはこれだけの理解ではまだ足りません。
次回の記事ではイキスギコードの正体を暴くもう一つの道順を、
そして次々回は、曲の中でのイキスギコードの使われ方を具体的に解説しますので、楽しみにお待ちください!
【中編】(2019/3/23 投稿しました!)
【追記】動画化しました
(2019/3/25)今回の記事を動画化して、YouTubeに投稿しました!
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