七夕様で学ぶリハーモナイズ【第七回】メロディとコード進行でキーが違う
こんにちは。いきくんです。
「七夕様」を題材にしてリハモを練習するシリーズの第七回です。
第六回はこちら↓
七夕様で学ぶリハーモナイズ【第六回】定番のエンディング - いきいき音楽科
ペンタトニック
今回のテーマはタイトルの通りなのですが、ちょっと難しいけど上手く決まると面白いリハモのテクニックのひとつに、
メロディはもとのキーのまま、コード進行だけ別のキーの動きをさせるというのがあります。
結論から言ってしまうと、このテクニックをもっとも使いやすいのはメロディがペンタトニックのときです。
言葉で説明するとややこしくなってしまいますが、だいたい何が言いたいのか分かったら是非実際に弾いて、実感してみてください。
「七夕様」のメロディは、そのキーの「1、2、3、5、6」番目の音だけで作られています。日本的に言うと「ヨナ抜き音階」、西洋音楽で言うとメジャーペンタトニックスケールです。
このシリーズでは、七夕様の原型をメロディ+主要三和音という西洋音楽の様式で捉えてそこから様々なリハモをしているわけですが、
そうすると「4番目と7番目が抜かれている」というのは非常に重要なポイントです。
メジャーキーにとって、そのキーを決定づけているのは4番目と7番目。
どういうことかと言うと、メジャースケールとはそもそも「均等」「対称」な音の並びではないのです(全ー全ー半ー全ー全ー全ー半)。
数字の話なのであらゆる視点から同じことが言えるのですが、キーの中の「5度(/4度)音程」視点で言うと、4番目と7番目がこのキーにとって唯一のトライトーン。それ以外は完全5度です。
ということは、このトライトーンのどちらか一方を半音変えてやると、これまでの関係性が崩れて、今までのトライトーンは完全5度に、別の場所に新しいトライトーンがひとつ生まれるわけですね。
4番目と7番目のどちらかが半音変わることによって、属調・下属調にいけるのです。
その2つの音がないということは、属調・下属調と共有している音だけがメロディだということです。
属調にとっては、もとの調の主音が属調のトニックコードのサウンドとクラッシュするため使い方が難しいのですが、
下属調は非常に使いやすく、たとえば冒頭のメロディなんかは、以前リハモしたこちらのコード進行、
まったく同じでコード進行のキーだけを下属調に移しても成立します。
ええ~そんなのアリ?って感じですが、
よく知られているメロディであればあるほど、この手の「驚き」が良い効果を生んでくれることがあります。
同主短調と短3度関係
もうひとつ別の例として、同主短調の「♭VII7-♭IIImaj7」を弱→強のポイントに使うことで、短3度上のメジャーキーの「V7-Imaj7」で転調するつもりに見せかけるという技があります。
♭VII7は、英語圏のジャズミュージシャンからバックドアドミナントなどと呼ばれる定番のコードです。
(過去に動画でも解説しています。)
IIm7-V7の通常のケーデンスの代わりに、IVm7-♭VII7でバックドアからトニックへ戻るという進行、サブドミナントマイナーのツーファイブ分割というキャラクターも兼ね備えています。
この♭VII7からメジャーキーのトニックに戻ることも当然できるのですが、ではこれをバックドアとしてではなく、通常のドミナントコードと捉えたとき本来の解決先はどこになるのかと言えば、♭IIImaj7ですね。
同主短調は、主調から見た短3度上の長調の平行調ですから、そのキーのV-Iが短調側の♭VII-♭IIIであるという至極当然のしくみなのですが、
これを本来「もとのキーのV7-I」が来るはずのポイントに持ってくることで、
今どのキーにいるのか、というのを一瞬ぼかして浮遊感のあるサウンドにすることができます。
(ちなみにこの例では、その後もとのキーのIVmaj7に対するセカンダリードミナントのツーファイブからするっと戻っていきます。)
乱暴な言い方をすれば、トニック上のメロディが「3rd」を演奏していなければ、コードクオリティはメジャー/マイナー置き換え放題ですから、トニックメジャー/トニックマイナーそれぞれの代理コードも使い放題です。
というわけで、メロディはそのまま同主短調側のコードを使う、というのがこの2つ目の例でした。
ある曲を別のキーに移調したり、「〇〇を短調にしてみた!」みたいな移旋するという遊びはよくされていると思いますが、メロディはそのままにハーモニーだけを別の調の動きで取り換えるというのも、一歩進んだ選択肢として持っておいて損はしないと思います。
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次回、第八回は「ここまでのまとめ」です!